ブックタイトル東日本大震災・福島原発災害と広島大学

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概要

東日本大震災・福島原発災害と広島大学

45②住民の一時立ち入り支援笑顔に救われた思い病院看護部 ICU 看護師 越智康弘 広島大学緊急被ばく医療派遣チームの第24 班として平成23 年6月10 日?13 日、活動を行った。第24 班は福島原発周囲の警戒区域内への一時立ち入りに伴う、住民や持ち出し物品への放射性物質の汚染の有無をスクリーニングし、立ち入り前・中・後の傷病者発生時に迅速に対応するという任務であった。 警戒区域への一時立ち入りは、福島第一原発からほぼ20km の地点に設けられた田村市古道体育館と南相馬市馬事公苑の中継地点を拠点に行われた。一時立ち入りする住民はあらかじめ決められ、受付時間を目安に個人個人が集まって来られた。 受付が始まると、医療関係者は受付が終わった住民から順に健康状態について問診を行っていく。住民は次々に集まり、顔見知りの人と再会すると席を離れて無事を喜びあうことも多く、誰の問診が終わっていないか把握することさえ一苦労であった。 住民は防護服を着たままの一時帰宅となり、6月中旬を迎え徐々に暑くなってきているうえに、防護服を着て動くとサウナのようになる。もちろん家に帰っても冷房はない。中継地点へと帰って来られた住民を迎える私たちも防護服を着て対応する。 住民にとっては、長期にわたる避難所生活で疲労が蓄積しているうえに、持ち帰れるものも袋1つ分だけである。それでも次に家に帰られるのはいつか分からないので、重い荷物を汗だくで抱えて帰ってくる。住民のストレスはどれほどであっただろう。そんな中でも、笑顔で返事をしてくれる住民の方には、こちらが救われた思いになった。 中継地点には、私たち医療関係者や東京電力をはじめ、電気事業連合会、消防、警察、引率等様々な関係者がいた。スクリーニングに関わる私たちは事前に流れを把握しておき、当日簡単な流れのチェックを行う。 マンパワーが充実しているわけではないため、役割や方法が明確になっていないことも多く、業種の違う関係者が協力して臨機応変に対応して行く必要があった。中継地点やスタッフによってやり方が異なっていることもあり、スムーズにいかないことも多々あったが、幸いにも第24 班は大きな問題が起こることなく2日間の任務を終えることができた。 今回の活動で、自分たちの担う役割・目的を把握しておくことの大切さを改めて実感した。混乱する現場において、自分たちが何をすべきか明確にすることは重要である。そのために平時から、緊急時における自分たちの役割は何か、何が足りないかなど想定して訓練しておくことが必要であると感じた。中継地点会場(住民防護服着用中)