ブックタイトル東日本大震災・福島原発災害と広島大学

ページ
51/84

このページは 東日本大震災・福島原発災害と広島大学 の電子ブックに掲載されている51ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

東日本大震災・福島原発災害と広島大学

41②住民の一時立ち入り支援食品持ち出し禁止に住民から苦情も病院診療支援部 診療放射線技師 藤岡知加子 私が初めて福島の緊急被ばく医療チームに参加したのは平成23 年6月11 日の24 班である。6月4日に入った22 班から避難指示区域の住民が一時的に帰宅する「一時立ち入り」が始まった。24 班の派遣時には大まかな流れは決まっていたが、まだまだスムーズではなかった。2 回目に参加した34 班(7月29 日)に比べて大変苦労したのを覚えている。 広島大学緊急被ばく医療チーム最大の役割は健康管理。一時立ち入りが可能な健康状態がどうかのチェックと、帰って来た時の健康状態の把握である。一時立ち入りの目的は物品を持ち帰ること、自宅の様子を確認しに行くこと、ペットを迎えに行くこと、慰霊などさまざまであった。 被災後自宅に一度も帰っていない住民にとって3カ月ぶりの帰宅である。立ち入りは1家族2人までながら、参加者の期待はとても大きかった。当初、一時立ち入りの際は防護服着用となっていたので、湿度の高い梅雨シーズンだけに脱水が心配されていた。後半になってからは簡易の防護服に変更された。 6月11日は古道体育館での活動であった。行き先の双葉町と大熊町ごとに、受付も2回に分けた。双葉町(バス5台、住民99 人スタッフ等33 人、計132 人)、大熊町(バス8台、大熊町住民122 人、スタッフ等48 人、計170人)総勢302人で立ち入りが行われた。 問診票を配り全体説明をした後、救護班と分担して健康チェックを実施した。一時立ち入り者の最終リスト作成と、健康上注意が必要な人のピップアップを、バスに乗るまでの1時間30 分の間に行った。住民等を乗せたバスの帰還後は順次スクリーニングを行った。体調確認とともに、体調不良者がいた場合ホットゾーンからコールドゾーンの救護班に早急に引き渡しを行うことが役目だった。 高齢の方もおられ心配された中で、幸い重症者はいなかった。1人が暑さによる軽い気分不良を訴えられた。個人モニターは最大28 μ Sv で 人も物品も除染不要、GM の最大カウントは7,000cpm であった。 持ち帰った物品は健康食品、たばこ、薬などが多かった。しかし口に入れる物は原則不可で没収となった。長く放置されていたため食品などが変質している可能性もあり、安全面から持ち出しが禁じられていた。これには住民から苦情が出た。一時立ち入り後半では、希望される方の持ち出しが許可された。 スタッフはチームを組んで交代で参加している。一斉に交代した日は初めてのスタッフばかりで流れが分からず大変苦労した。また、他チーム(経産省や電事連など)との連携も当初は手間取った。今回のような事態では職種間の垣根を取り払い、協力し合うことが最も重要であると思われた。一時立ち入り会場にて住民受入準備をするスタッフ