ブックタイトル東日本大震災・福島原発災害と広島大学

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概要

東日本大震災・福島原発災害と広島大学

39②住民の一時立ち入り支援立ち入り者の把握に苦労原爆放射線医科学研究所 がん分子病態研究分野 准教授 松井啓隆 平成23 年6月25 日、26 日の2日間にわたり、警戒区域への住民一時立ち入り支援業務のため、福島県広野町体育館へ派遣された。同体育館はJ ヴィレッジのすぐ南側にあり、福島第一原発から20km 余りの場所に位置する。 広野町に入ると、震災後2カ月を過ぎても、道路の路肩が大きく陥没している場所が手つかずで残されたままになっていた。電気は通じているものの未だ断水が続いているために、避難区域ではないにもかかわらず、実際に住み続けるのは困難な状況であることがわかった。 そのような中、われわれ広島大学から派遣されたチームの役割は、避難区域に一時立ち入りする住民の方々の健康状態を確認した上で一時立ち入りに送り出し、また、彼らが戻ってきたときに円滑に外部被ばくのスクリーニングと再度の健康チェックを行うことにあった。スクリーニングフロアの統括を任されたわれわれは、各方面と綿密な打ち合わせを行って、混乱が生じないよう方針の統一を行う重責を担うこととなった。 上記の通り、統括班には主に二つの業務が任された。一つはスクリーニングフロアの統括として、避難区域に一時立ち入りする人数と彼らの健康状態を確認することであった。住民だけでなく、警察や救急、引率バスの運転手、動物愛護団体のスタッフなどがおり、当日になるまで人数が確定しなかった。そのため各方面の責任者と連携をとり、立ち入り者を把握するのに苦労した。もう一つの業務は、一時立ち入りから戻った住民の表面汚染サーベイで、長時間にわたり蒸れる防護服を着た高齢者の負担とならぬよう、スムーズなサーベイを心掛ける必要があった。 派遣された2日間は、大きなトラブルもなく比較的順調に一時立ち入り支援業務を遂行することができた。本業務は国の省庁や役所の職員、消防・警察、電力会社社員、自衛隊など、普段は直接の接点のない職種に就いている者同士が相互協力しないと円滑な業務がなし得ない。このため、互いの職務を尊重し、個々に適切な任務を任せることが必要であると感じた。一時立ち入り支援チーム