ブックタイトル東日本大震災・福島原発災害と広島大学

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概要

東日本大震災・福島原発災害と広島大学

31④ J ヴィレッジを診療拠点に限られた資材で最大限の工夫病院看護部 高度救命救急センター 副看護師長 音谷順子 東日本大震災発生から約1 カ月後の平成23 年4月8日~4月12 日、私は福島第一原発事故対応拠点であるJ ヴィレッジ内のメディカルセンターに診療所を立ち上げる緊急医療班として福島に派遣されることとなった。 J ヴィレッジは福島原発で作業している人や自衛隊が駐在しており、混沌とした雰囲気であった。J ヴィレッジも被災しており、ライフラインは自衛隊の設備でやっと本館が復旧した段階であり、私たちが拠点としたメディカルセンターでは電気は使用できたが、上下水道は復旧していなかった。医療室にもかかわらず水は使用できず、手洗いもできない状態であった。 また、メディカルセンターも軽微とはいえ被害を受けており、まず行ったことは、飛散した物品の片づけや、使用できる医療機器の確認であった。メディカルセンター内には救急医療に必要な物品はもちろん、緊急被ばく医療に必要な物品もなかった。最低限必要な物品の調達手段やメディカルセンターでの患者の受け入れ方法など、東電病院や自衛隊医療班のスタッフと相談しながら決定していった。医療体制を構築するためには様々な職種の方と連携していくことが重要であると実感した。 そのような折、福島原発内で熱中症等の傷病者が発生し、その対応を行うこととなった。幸いにも被ばく・放射能汚染はなく、通常の診療での対応が可能であった。しかし、東電病院のスタッフが準備していた医療品だけでは不十分で、シーネ(副木)固定のために段ボールを使用したり、熱中症の患者に使用する輸液を冷却するために少量の保冷剤で冷水を作ったりと、今ある物品の中で最大限の工夫を行った。また、福島原発から患者を搬送するには2 時間近くかかり、急変には対応できないという問題が浮上したため、放射能汚染があった場合の対応方法や患者搬送の短縮のための方策、熱中症対策などの検討も行った。 もう一つの任務として広域搬送体制の確立があり、自衛隊と協力し、自衛隊ヘリコプターで患者を搬送するためのシミュレーションも行った。 私が活動した5 日間で、緊急医療室の救急医療体制の基盤をある程度整備することができ、次に派遣されるスタッフに引き継いだ。しかし、緊急被ばく医療に関する継続したケアを提供していくためには、Jヴィレッジの活動に対応したマニュアルの作成が必要であったと考える。Jヴィレッジでの医療班会議