ブックタイトル東日本大震災・福島原発災害と広島大学
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東日本大震災・福島原発災害と広島大学
24第2 章 ヒロシマからフクシマへ③住民の被ばくスクリーニング 私たちは、緊急被ばく医療派遣チーム第5 班として、平成23 年3月25 日から30 日まで自治会館・OFCを中心に活動した。放射性ヨウ素の拡散を予想したSPEEDI のデータが私たちの到着直前に公表され、避難地域以外のいわき市、飯舘村や川俣町の一部では住民の放射性ヨウ素による甲状腺被ばくの恐れがあることが明らかになっていた。チェルノブイリ事故では甲状腺被ばくによる小児甲状腺がんの発症が問題となっているため、これらの地域の小児について甲状腺被ばく線量を調査する必要があった。 小児甲状腺被ばく線量調査は、現地対策本部が原子力安全委員会の助言を参考に、福島県の協力を得て、まず3月25 日にいわき市で、ついで28 日から川俣町、29 日から飯舘村で実施した。現地対策本部や被ばくサーベイを行うために全国から福島県に集まっていた方、さらに地元自治体の方々の連携により、3日間で1,000 人以上の小児について甲状腺被ばく線量調査を実施することができた。 この調査では甲状腺からの非常に微弱な放射線を正確に検出する必要があるため、バックグラウンドの線量が0.2 μ Sv/hr 以下の場所を確保する必要があった。小児の甲状腺被ばく線量調査に当たる原爆放射線医科学研究所 細胞修復制御研究分野 教授 田代 聡いわき市の空間線量は既に非常に低く、いわき市保健所の建物内で検査に適した部屋を容易に探し出すことができた。 しかし、川俣町と飯舘村は屋外の空間線量が数μSv/hr 以上と非常に高かったため、検査に適した場所を探すのに非常に苦労した。特に飯舘村には放射線からの遮蔽に適したコンクリート製の大きな建物は少なく、隅田博臣副診療支援部長とともに1日かけて村中のめぼしい建物内の線量を全て測定して回ったが、バックグラウンドの線量が十分に低い場所は見つからなかった。このため、川俣町に小児を連れて行くことも検討したが、最後に一度測定してあきらめていた村役場の村議会議場をもう一度調べ直したところ、議長席後ろの小さなスペースでようやく基準を満たす場所を見いだすことができた。 小児甲状腺被ばく線量調査では、幸いなことにスクリーニングレベルを超える小児は1例もいなかったので、調査に関わった全員で一安心した。しかし、福島の小児全員を調べたわけではなく、またスクリーニング検査の精度にも限度があるため、住民のため小児健康影響のフォローアップが必要であると考えられた。飯舘村村議会議場での小児甲状腺被ばく線量調査