HU-plus(Vol.6)2018年4月号
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Q趣味は何ですか?A音楽を聴きながらのドライブ。出張の際に広島空港まで運転する時間がお気に入りです。Q子どもの頃の夢は何でしたか?A歌って踊れる高校教師Q尊敬する人の名前と理由を教えてください。Aドイツ航空宇宙センター(DLR)長官のパスカル・エーレンフロイント先生。豊富な研究実績もリーダーシップもあり、性格も良く、美しい、“神ってる”方。ずっと憧れている女性研究者です。Qこれだけは絶対誰にも負けない、というものを教えてください。A日本の小天体探査の成功をリードする中核の1人でありたいと思っています。Q日本の社会へのご意見をどうぞ。A昨年は同世代の女性がよく話題に上ったと感じました。女性は良くも悪くも「目立つ」。能力があるとたたかれ、その一方で「希少価値」と見られることも多い。男性社会の中で女性が輝くのではなく、男女どちらでも優秀な人がリーダーになるのが普通、という社会になってほしいです。Qご家族とのエピソードは?A今でも両親、妹とカラオケで歌いまくり、最後に「アルプスの少女ハイジ」で締めています。Q得意なスポーツは?A大学院生時代、研究の合間にストリートダンスをしていました。Q座右の銘は?A松下幸之助の「出るくいは打たれるが、出すぎたくいは打たれない」。薮田准教授に一問一答やぶた・ひかる●名古屋生まれ、東京育ち。2002年筑波大学大学院博士課程化学研究科修了、理学博士取得。産業技術総合研究所、東京都立大学(現:首都大学東京)、米国アリゾナ州立大学、カーネギー研究所でのポスドクを経て、2008年大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻助教、2017年から現職。「はやぶさ2」ほか、小惑星フェイトンのフライバイ探査計画「DESTINY+」など、日本国内の小天体探査とそれらにおける国際協力に幅広く関わる。学際領域であるアストロバイオロジーの発展にも精力的に取り組んでいる。「はやぶさ2」探査機イメージ。「はやぶさ2」では小惑星リュウグウの惑星の表面に探査機から弾丸を当て、舞い上がった物質を「サンプラーホーン」という筒で回収する採取方法をとる。サンプル回収の機会は3回で、「数百㎎でも回収できると嬉しい」と薮田准教授。              ちり見向きもされなかった石や塵の有機物がいきなり注目の的に 2010年6月、世界で初めて地球重力圏外にある小惑星イトカワの表面に着陸した小惑星探査機「はやぶさ」。サンプルを採取して地球に帰還し(サンプルリターン)、大きな話題となった。その後継機である「はやぶさ2」は、2018年半ばに有機物と水が多く存在すると考えられている小惑星リュウグウに到着し、1年半ほど滞在して調査やサンプル採取を試みた後、2020年末頃に地球に帰還する予定だ。 薮田准教授はこの「はやぶさ2」のプロジェクトで、着陸地点選定科学評価チーム長と固体有機物分析チームのリーダーを務めるが、初めから宇宙化学に興味があったわけではなかった。 高校時代、化学の先生に影響を受けて「化学の教師になりたい」と筑波大学に進学し、化学を専攻。研究室を選ぶ際に薬学や半導体の分野には興味が持てず、「宇宙化学研究室」という看板にひかれてその門をたたいたことが宇宙につながる第一歩となった。「研究室では、空から降ってくる隕石を化学分析して、その中にどのようなものが含まれているのかを化学的な手法で明らかにし、また室内実験で検証するというものでした。それらを解明することで、約45億年前に太陽系がどのような物質からどのように生まれたのか、地球や生命を作った材料物質は何だったのか、そして生命はどのように誕生したのかを探っていったのです」。 しかし、隕石は量が少なく貴重で、学生の身分ではすぐに研究対象にすることができなかった。学生時代は1000万年前に石油を産した山形県の岩石を、その後は恐竜が絶滅した6500万年前の地層を研究し、その中に残っている当時の生物に由来する有機物を分析研究することで博士号を取得。初めて宇宙化学の研究に携われるようになった。 「私が学生の頃、隕石や宇宙の塵の有機物の研究って、全く目立たない、マニアックなものでした」。しかし、有機物が太陽系の最初期から存在していて、太陽系の誕生に大きく関わったことが認識され始めると、にわかに注目を浴びるようになる。そのきっかけの一つが、2006年にNASAが探査機で彗星から塵を持ち帰った「スターダスト」計画。彗星の塵1粒から有機物を検出するために、放射光を使った分析方法により、成果を上げた。当時、ワシントンDCで博士研究員をしていた薮田准教授は、幸運にも「スターダスト」計画に関わっていた当時の研究指導者にメンバーに入ることを認められ、当時はその手法がまだなかった日本に持ち帰ることができた。「日本の地球外有機物研究の進歩に少し貢献できたかな」と薮田准教授はほほ笑む。「はやぶさ2」の成果をその先につなげたい 現在は「はやぶさ2」プロジェクトの成功に向けて、国内外の研究者たちとの綿密な打ち合わせや会議に追われる日々が続く。研究者としてのモットーは「流行にのらないこと」。“流行っているからやろう”ではなく、“好きだから”“やり続けたいから”という思いがある方が、より深く、質の高い成果が出せると考えている。学生たちには「急がなくていい。本当にやりたいことを見つけ、地味なことからしっかりと基礎を積み上げて」と普段から繰り返し話しているという。「うまくいけば、『はやぶさ2』が採取したサンプルを広島大学に持ってくることができるかもしれません」。それをきっかけに宇宙化学に興味を持つ人が増えること、その人たちとさらに地球生命の起源、そして地球以外にも生命を育みうる惑星環境を探る新しい領域「アストロバイオロジー」の発展にも力を入れたいと目を輝かせる。はやすいせいいんせきⓒJAXA014

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