HU-plus(Vol.1)2016年11月号
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  従業員数15万人、売上高4兆円超。株式会社デンソーは、日本を代表する自動車関連製品のメーカーです。そのグループ、デンソー・ヨーロッパのCTOを務められるのが中川雅人さん。1980年、機械工学科卒の大先輩です。その中川さんが久々に帰国。「欧州流開発」と題した広島大学との意見交換会に出席された氏にインタビューを行いました。まずはデンソーへの入社動機から。 「機械工学を専攻していて、自動車業界には早くから興味がありました。特にゼミでディーゼルエンジンを学んでいましたから、その思いが強かったですね」 中川さんは海外生活が長いとお聞きしていますが、どのあたりで活動されていましたか。 「アメリカのアイオワに5年、それからロンドンに異動して1年ちょっと、デュッセルドルフに10年いて、アムステルダムに1年4カ月、それからドイツに戻って、今のミュンヘンです」 海外勤務約18年中、ヨーロッパに13年。デンソー・ヨーロッパでは主にどんなことを担当されたのですか。 「ドイツにパワートレイン(エンジンでつくられた回転力を駆動輪へ伝える装置類)開発拠点を設立するために、東奔西走していました。アーヘン・エンジニアリング・センターとミュンヘン・エンジニアリング・センターがそれですが、パワートレイン機器に加えてエンジンECUやアイドル・ストップ用スタータなど電子・電気機器の開発設計などにも取り組んでいます。現在は、『未来創成技術』について思案していて、20~30年後に必要な技術について仮説を立てていろいろ検証しているところです。世界で16万人近くいるデンソーの未来を考えると、今からタネを蒔いておかないと間に合いませんからね」 理事や教授陣をはじめ行政からの参加者も含めて28人の参加があった9月26日(2016年)の意見交換会。中川さんはどんな話をされたのでしょう。 「一つは、私たちの開発拠点でもあるアーヘンについて、特にドイツにおけるエクセレンス・イニシアティブ11大学の一つに指定されているアーヘン工科大学と自動車業界のつながりについてです。もう一つは、自動車業界における日本の技術開発と欧州流の技術開発の違いについて意見を申し述べました」 どんなところが違うのでしょう? 「ヨーロッパのプレミアムカーの筆頭であるBMWは、地方の小さなエンジン製造工場の一つにすぎませんでした。それが世界をリードする会社になったのは、プレミアムカーをつくるといった“高い志”を持った人たちが、差別化技術でイノベーションを進めたからだと思います。ただ、小さい会社でリソーシスを一から全部投入したらやっていけない。そこで彼らが考えたのが、差別化しないところは『標準化・共通化』を、欧州自動車業界を巻き込んで、徹底して行うことでした。日本のようになんでも自前主義はとりませんでした。そこが一番の違いだと思います」 最後に母校の後輩へのメッセージを伺いました。 「これはアメリカ時代の上司から学んだことですが。『Think Positive』ということですね。できないという理由を10個考えることより、1つでも成功する可能性を考えることに意義・価値があるということです。もう一つ、これは欧州で同僚から学んだことですが、『我以外皆師哉』という言葉です。人は他人の悪いところはよく見えます。その悪口を言っても何も変わりません。人には誰でもいいところがあります。その人のいいところだけを盗むこと。そうしたら、皆さんすごい人になれると思います」統合移転前の東千田キャンパスで学ばれたという中川さん。広島大学で得たのは友だちのネットワークだという。2014年9月にオーストリアで行われたAVL(独立資本で世界最大のパワートレインエンジニアリング会社)主催の内燃機関国際会議(第26回国際AVL会議)で基調講演をする中川さん。022022

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